8/22 new!! ゆるゆると誰にいうわけでもなく誰が知るわけでもなく更新していきたい。

2018/02/23

「KindControl+1」あとがき

「KindControl+1」あとがき

誰かに書けって言われたわけではないんですが、作演出としてのあとがきを書いておこうと思います。

【はじまり】
こんなん書きました〜、とKindControl主宰の乃璃子さんに台本ヤクザ(※台本を送りつける行為。語感が好き)してましたら、作演を依頼されました。
いやあんたぼくの演出みてなくない?(最近やってないし)と思いましたが、ダンス作品の「境目に揺れる、夜」とか映像でダンス作品と演出作品見てもらってたし「OK〜」くらいなノリで返した気がします。で、なにやる?ってなったんですが、既存の台本でも新作でもいいですよ、と言っちゃいました。言っちゃったんです。

【後々】
一人芝居と二人芝居、はぼんやりと初めから決まってました。せっかくなんで、ね。みたいに、乃璃子さんの役者をしたい欲みたいなものからはじまった企画だと思うので、それには応えよう、と。
既存でも良かったんですが、これも、せっかくなんで、ね的に新作2本になった気がします。普段書くとき、あてがきはしてないんですが、出演する「その人」を意識して書いてるので、新作のが、つまり乃璃子さんをイメージして作った方がいいと思いました。それがもはやあんなことになろうとは………(伏線)

【書く、refrain】
最初に手をつけたのは「refrain」でした。個人的にre、と言う言葉・文字が好きで、一番初めにタイトルが出来ました。タイトルから生まれるのはよくあることです。
タイトルと、絵は浮かんでました。舞台上としての絵が浮かんで、そのあとその絵に繋げるために言葉とか体を使う、みたいな書き方をします。浮かんだ絵は、ぐるぐると同じ行為をする二人の人間です。

こっから長かったです。2週間くらい。最後は年越しから2日くらい、こたつにこもりっきりで書いてました。
自分的に、破滅的に恥ずかしいシーンが出来て、最後まで悩みました。ぼくが恥ずかしいはどうでもいいんですけど、そこにリアリティは生まれるか、みたいな。これは後述、またします。

【書く、Answer】
で、こたつむりを終えて、「あー、なんとかひと段落書けた」ってなって風呂入ってぼんやり「もうひとつ、一人芝居、かぁ」ってなって風呂出たらなんか書ける気がして、そのあと6時間くらいで書けました。風呂出た午前3時から午前9時くらいまでで。
浮かんだのは、「誰か、私に答えを教えてよ」の言葉です。そっからの、Answerというタイトルです。

これはお客様に舞台上に上がっていただく仕様上、乃璃子さんに相談したんですが「いいんじゃない? 私はやりたい」と力強いけど方向が少しズレてる言葉を頂いたので、やろうと思いました。そのズレにだいぶ笑いました。

【refrainについて】
ぼくが書くお話は、「一般的にみて重要ではない」ことが多いと思います。個人的に重要というか。例えば、誰かが好きとか、就職どうしよう、とか。そこらへんを三人称の視点でみれるから、演劇というメディアを選んで気がします。逆に、演劇というメディアだからそうしてるとこもありますし。
で、そんな就職どうしよう、大学卒業してどうしよう、なお話でした。

で、結局個人の云々、個人の重要な物事を重要視してる訳じゃなくて、その壁みたいなものにどう立ち向かうか、逃げるのか戦うのか回り道していくのか、みたいなところを毎度毎度書いてます。今回は、「やってみたら簡単だった」、つまりとりあえずやってみたら簡単に変わるぞ、みたいなことです。で、その「とりあえずやってみる」というのは、ぼくとしては努力とか才能ではなくて、偶然、だと思ってます。なんとなく、とかそんな気がしたから、と言うような、軽やかさがあると思ってます。
その軽やかさ、へのぼくの憧れみたいなところと、ある意味考えなしのことのぼくの批判みたいな、どっちもあります。
また、今回は軽やかさ、の為に諦観を持ってきました。諦め、というのは個人的に大好きな感情で、それまで握りしめていたものを手放す、ということが含まれています。握りしめていたら、別のものを握ることができない。なので、諦め、という言葉はぼくにとっては概ねポジティブです。別の物も握れるし、後は野となれ山となれ、みたいな方向の感覚って気持ちいいんで。

そんなこんなで、ラストシーンは恥ずかしい告白シーン(絶対やりたくないと思っていた)だったですが、男を演じた木村さんがとてもいい演技で中和してくれました。感情的な演技、て苦手で(舞台というメディアで、ですけど)、毎回萎えてしまうので、そこを重くなりすぎずやって頂いた木村さんに拍手です。また、ある程度感情的になっても、いいかと思いました。なぜなら、Answerがあるので。Answerはそんな告白シーン、ドキっ、みたいなのと間逆の話なので、ちょうどいいやっ、ここでちょっと軽くなった分だけAnswerで叩き落してやる、みたいなことも考えてました。

そんなrefrainでした。照明の美しさ(美しい
故の虚構さ)と音楽の暴力性(音量、リズム、それだけで感情が持ってかれる)も、阪上さん上原さんという心強いメンバーに助けられました。演出なんて「それ、いいね!」というくらいしか出来ないと思っています。本当に「それ、いいね!」の連発で軽率な感じでしたが、それがいいと思ったので、そういうことです。

そんなrefrain、でした。繰り返して繰り返して繰り返してることに良いも悪いもなくて、逆に諦めてちょっとやってみっかくらいの気持ちで簡単に変えられる、という提案です(それも偶然性とかあるので、提案にはなり得ないですけど)

以上、refrainでした。

【Answerについて】
Answerです。これ、実はぼくが初めて書いた台本を下敷きにしてるところがあります。「演劇の害と効能について」という台本ですが、こっちも同じ闇に振り回されるお話です。
これは、「演劇という虚構の中でなら、何をしてもいいのか?」という問いが原点です。虚構なら安易に人を殺していいのか、お客様に悪意を投げかけていいのか、みたいな虚構・フィクションをモチベーションにした嫌なところを詰め込んでます。公演情報に寄せたコメントに、「演劇の大嫌いなところ」と書きましたが、それを詰め込みました。演劇というメディアは虚構を前提として成り立っているので、それを存分に活用(悪用?)して、舞台上で人を殺し憎まれ口を叩き、最後に命を断ちました。
この作品に対しては腹がたつ人がいると思います。ぼくも立つと思います。ただ、なぜそれを見せるのかと言われると、そこに人の美しさが宿るからだと応えることができます。
虚構を前提としたメディアですが、前提としているからこそ、そこに身体や発語の「リアリティ」がみえて、一瞬だけでも「これは現実ではないか」と思える時があれば、嬉しいです。物語も演出も音響も照明も全部全部フィクションなんですけど、いま目の前で話して動いて明かりがあって音楽が流れて、というのは現実のことなので。
その現実と虚構が紙一重の空間が、ぼくは大好きです。

乃璃子さんは勇敢に虚構と組み合ってくれました。がっぷり四つでした。綺麗に上手投げされて稽古場でよく泣いていました(何言ってるのかぼくにもわかりませんけど)(だいぶ上にかいた伏線も回収です)。
一度だけの公演一度だけの本番で、舞台上で(虚構として)生きて、死んでいただいて、感謝しています。

虚構を構成する光、そして音も、とても美しかったです。現実(日常)ではあり得ない、その空間が現実に置かれ、現実ではない言葉を実際に目の前の人間が話すという行為、とても好きでした。

こんな場所ですが、舞台上に上がって頂いたお客様には最大限の謝辞を述べます。本当にありがとうございました。台本にある、「舞台上にいるお客様は、そこにいるという最大の仕事をして頂きました」(要約)という言葉は、本当にその通りだと思っています。その空間は、あなた達が存在しないとなり得ない場所だからです。近くで大きな音とか声とか出してごめんなさい。そこにいて、観てくれて、本当に助かりました。ありがとうございます。

これで、「Answer」も終わりです。

【以上】
誰かの為というより自分の為の振り返り、これでおしまいです。
足一という自分のフィールドではなくて「KindControl」という乃璃子さんの大事な場所で自由にさせて頂いて、感謝してます。

多分これは、色々詰め込んだおしまいの儀式でもあります。観て頂いた、またこの文章を読んでいただいたあなたに、「またいつか」なのか「もうこれで終わり」なのかはわかりませんが、これでひとつの区切りです。

この公演に参加して頂いた方も、観に来て頂いた方も、観に来たいと思って頂いた方も、本当にありがとうございました。
では、叶うならばまたいつか会えたら。

2018.2.23
井上大輔

2016/12/26

100のお題 21.雲一つ無い青空(戯曲)

21.雲一つ無い青空

少年
少女



☆少年と少女は原色の衣装、男と女はモノクロの衣装。途中、二度入れ替わる
☆初めのシーンでは、モノクロの男の服のどこかに花がついている

暗転のなか、女の声がする

女  花を育てなさい。そして、ただただ生きなさい。この場所でただ育って、枯れて、また生まれて。ここは、そういう場所だから

ゆっくりと明転
男、立っていて、指示棒で何かをさしている
少年、女のひざで寝ている
少女、三角すわりで真面目に授業をきいている

男 はい、ここまでがドームの歴史だ。質問あるか?
少女  はい
男  なんだ?
少女  これからドームはどうなるの?
男  ……それは、まぁ、なんだ。お前たちがどう生きるかって話か?
少女  ……うぅん
男  知っての通りだが、明かりはあるし綺麗な水もでる。自給自足で間に合ってるんだから問題はない。あんまり深く考えるな。こいつみたいに

男、少年を引っ張り起こす

男  はい、おはよう。もう一度授業をやりなおそうか?
少年  大丈夫
男  だよな、飯にしよう

女、一度はけてバスケットと布をもってくる。四人でピクニックのように食事の準備をする

女  はい、じゃあ手を合わせて
全員  いただきます

サンドイッチのようなものを食べている
ゆっくりと暗転

抑えた声で話す
会話中、徐々に明るくなっていく
男と女、グラスで飲み物を飲んでいる

男  なぁ、もういいんじゃないか
女  ……なにが?
男  いつまで俺たちは生きているんだ
女  生きていられるだけ
男  いつまで生きていられるんだ
女  その時は、その時よ
男  いつまでその時を待つんだ
女  生きてるだけじゃだめなの?
男  違う
女  なにが
男  俺たちは生きてるんじゃない、死んでないだけだ
女  ……

少女、静かに入ってくる
女が先に少女に気づき、男が後から気づく

女  あら、目が覚めちゃったの?
少女  ……お酒?
女  そうよ、大人だからね
少女  えぇ、ずるい
女  すぐ大人になるからね
少女  うぅん
男  寝れないのか?
少女  怖い夢みちゃった
男  そうか
少女  白いおひげの生えた人がね、ベットで苦しそうにしてるの
女  そうなの?
少女  なにもできなくて、それをずっと見てるの
女  ……

女、少女を抱きしめる

女  怖かったね、じゃあ寝にいこっか
少女  大丈夫、ぎゅってしてもらえたから怖くなくなった
女  そう

少女、一人で帰る

女  覚えてるのかしら
男  なぁ、なんで
女  いいの。私たちはこうしていくしかないの。私たちのずっと前から、ずっと後まで
男  ……ふざけてる
女  真剣よ

男、酒を飲む
ゆっくりと暗転

明転

女と少年、座っている

少年  なんでそんなになるのに酒なんかのむの?
女  飲み過ぎなければ、楽しいのよ?
少年  でも飲み過ぎたんでしょ?
女  そうね
少年  やっぱり大人って馬鹿だなぁ
女  そう、馬鹿よ
少年  え?
女  ちょっと長く生きただけで、子供と変わらないわ
少年  そうなの?
女  そうよ、知らないこともいっぱいあるし、知る前に死んじゃうわよ、きっと
少年  いいの?
女  え?
少年  その知らないこと、知りたくないの?
女  うーん、大人はね
少年  うん
女  知りたくなくなっちゃうんじゃないかな
少年  えー
女  もういっぱい知っちゃってるから、困らないもの
少年  でも、もっともっと知らないこともあるんでしょ?
女  そうね
少年  じゃあおかしいよ。知らないままって悔しくない?
女  悔しい?
少年  だって、知らないことがあるって知ってるのに、それを知らないまま死ぬんでしょ?
女  そうね
少年  いやだよそんなの。大人ってわかんない
女  大人になったらわかるかもね
少年  わからなくていいけど
女  美味しいお酒も飲めるわよ
少年  飲み過ぎて勉強の時間に起きられない大人がいるからやだよ
女  その通りね

二人、笑っている

暗転

明転
男と少女。男は寝ている。少女は心配そうに見ている

男  ……もう大丈夫だぞ、吐かんぞ
少女  本当?
男  多分
少女  はぁ

少女、グラスに水を入れてもってくる

男  ありがとう


少女  ねぇ
男 うん?
少女  死ぬってなんなの?
男  なんだそれ
少女  図書室で読んだ
男  あー……そうか
少女  なんなの?
男  また授業でやるよ
少女  難しいことなの?
男  難しくないよ
少女  じゃあ教えてよ
男  難しくはないんだが……

少女、男をみている

男  わかったよ。簡単に教えてやる
少女  うん
男  ずっと寝てしまうことだ
少女  ずっと?
男  もう起きない
少女  なんで?
男  そりゃわからん。でも、起きないんだ
少女  ……
男  ……嫌か?
少女  うぅん、よくわかんない
男  だろ?
少女  うん。難しい
男  ずっと起きないから、土に埋めるんだ
少女  土に?
男  そう
少女  花が咲くの?
男  いや、花が咲くから埋めるんじゃなくてな
少女  なに?
男  まぁ、埋めないといけないんだ
少女  埋めなかったらどうなるの?
男  まぁ、埋めないといけないんだ。それに、埋めたらもしかしたら花が咲くかもしれない
少女  やっぱり咲くんじゃん
男  まあな
少女  でも埋めちゃっていいの? 本当に起きないの?
男  起きないよ
少女  寝てるのに
男  寝てるんだけどな、そのときは心臓が動いてないんだ
少女  それだけ?
男  ん?
少女  心臓が動かないだけで、起きられなくなるの?
男  そうだ。それに、一度止まるともう動かない
少女  ふうん、変なの
男  そうだ、変だな
少女  それで、いつ止まるの
男  ……いつだろうなあ。まぁ、お前らより俺らの方が早く止まるのは確かだ
少女  そっか
男  嫌か?
少女  嫌

暗転

うっすらとした明かり
男が女を下手から上手へとゆっくり運ぶ。女は死んでいる。少年と少女は泣きながら男のあとについていく。

少年と少女が男を上手から下手へとゆっくり運ぶ。男は死んでいる。少年と少女は顔を伏せている。

暗転

少年を演じていた役者が男を演じ、男を演じていた役者が少年を演じる。
少女の役者も同様に入れ替わる。
男と女の衣装は原色、少年と少女の衣装はモノクロ。女の衣装には、どこかに花がついている。

明転
女が授業をしている。少年と少女は授業を聞いている。男は少年と少女の横に座っている。

女  そんな訳で、このドームは常に安定した気温と気候が保たれているの
少年  エネルギーが切れることはないの?
女  えぇと、簡単にいうと、この星の真ん中からエネルギーをとってるから、エネルギーが切れるとしたらこの星が爆発するときよ
少年  えっ、それっていつくらい?
女  大体20億年後
少年  20お、く
女  まぁだから、問題ないわ
男  だからお前たちは、何も考えずに飯食ってクソして生きてりゃいいんだ
少女  ねぇ
男  なんだ、クソか?
少女  なんの為に生きるの?
男  ……なんの為?
少女  何もしなくてもご飯が食べれて、ずっと明るくて、暑くも寒くもなくて、私たちは何をしたらいいの?
男  何もしなくてもいい
少年  何も?
男  そうだ、何も、だ
少年  ……ふうん

ゆっくり暗転
会話の途中からゆっくり明るくなっていく
男と女、酒を飲んでいる

女  もう、やめたら?
男  ……飲まないでやってられるかよ

女、少し笑う

男  なんだよ
女  うぅん、あの二人も、もしかしたらおんなじ気持ちだったのかなって
男  あぁ……、よく二日酔いしてたな
女  うん


男  なあ
女  うん?
男  本当に、外に出たら死ぬのか?
女  何回め? 死ぬかわからないから出られないんでしょ
男  もしかしたら、生きられるかもしれないんだろ
女  もしかしたら、死ぬわよ。私達だけじゃなくて、あの子たちも含めて
男  ……
女  ね、そうやって生きていくしかないの。そうやって、ずっと生きてるのよ
男  生きてるんじゃなくて、死んでないだけじゃないのか
女  そうよ、それは、いけないの?
男  最悪だね
女  最高なのかもしれないわ
男  なにがだよ
女  尽きることのない食料に、常に雲一つない青空。もしかしたら、天国なのかもしれないわね
男  そう考えられたら、幸せなのか?
女  そう考えて、あの人たちも大人になったんじゃないかなって
男  そうだな

ゆっくり暗転

明転

下手から上手へ、女が男をゆっくりと運ぶ。男は死んでいる。その後ろに少年と少女が泣きながらついていく

上手から下手へ、少年と少女が女を運ぶ。女は死んでいる。少年と少女はうつむいている

少年を演じていた役者が男を演じ、男を演じていた役者が少年を演じる。 少女の役者も同様に入れ替わる。
男と女の衣装はモノクロ、少年と少女の衣装は原色。男の衣装には、どこかに花がついている。

暗転
明転

男が授業をしている。少年と少女が授業を受けている。女はうつむいて、少年と少女の隣に座っている。

男  と、ここまでが死だ。わかったか?

少年と少女、腑に落ちない表情

男  まぁ、そうだわな。体験するまではわからんだろうな
少年  どうやって体験するの?
男  ……まぁ、いつかは体験するんだ。
女  そう、ね
少女  お腹すいたー
少年  あ、俺も!
男  よし、じゃ、飯にするか

男、はける
女、少年と少女を抱きしめる。そのとき、二人に耳打ちをする。なにか言おうとする二人にしーのポーズをする。
男、シートとバスケットをもってくる。四人で食事の準備をする。

男  よし、じゃあ手を合わせて
全員  いただきます

サンドイッチのようなものを食べている
ゆっくりと暗転

薄暗い明かり
男と女、お酒を飲んでいる

男  これ(酒)だけが楽しみだな
女  ねぇ
男  うん?
女  外に出ない?
男  ……
女  このまま、生きてるか死んでるかわからないまま続けるの?
男  俺らだけだったらいいんだよ。そうじゃないだろ
女  あの子たちも、大人になって、諦めて生きるの? それって生きてるっていうの?
男  生きてるだろ、飯食って寝て、それの何が不満だよ
女  だって、私たちは、空を見たことがないでしょ
男  毎日みてるだろ
女  いつもいつも、雲一つない青空。あんなの空じゃない
男  じゃあなんだよ、ちゃんとした空をみたいからって理由であいつらを殺すのかよ
女  気候変動で外は人間が住める環境じゃない……、そんなの本当に信じてるの?
男  信じるもなにも、そうじゃないとここで生きてる理由がないだろ
女  なんの為に生きてるの
男  あいつらの為だよ
女  そうして、ここで何世代も何世代もずっと生きてきたんでしょ
男  ……
女  もう、いいじゃない
男  でも、あいつらは、まだ子供だ
女  そう、だから、ずっと死ぬ直前になるまで教えてくれなかったんでしょうね
男  それが、あいつらにとって一番なんだ
女  そう、それが大人になる時間なのよね、きっと
男  あぁ
女  ごめんなさい
男  ん?
女  私はあの子たちを大人にする

少年と少女が、入ってくる

男  お前ら!ずっとそこにいたのか
女  これで、私たちと同じように、この子たちは大人よ
男  ……
少年  外に行くと死ぬの?
男  そう、言われた
少女 それは本当なの?
男  本当かどうかなんてわからない。でも、扉をあけて毒が入ると全員死ぬ
少年  (少女に)ねぇ。死ぬの、こわい?
少女  わかんない
男  まだ大人じゃないからだ
女  大人でもわかんないわよ。死んだことないんだから
男  死ぬかもしれないんだぞ
女  生きるかもしれない
少年  空って、青色じゃないの?
男  いや、それだけじゃなくて……、白い、雲ってものが浮いてるかもしれない
少女  さわれるの?
女  それは、わからないわ。ここにいる大人は、子供だから
少女  子供なの?
女  あなたたちが知ってることと同じことしかしらないわ
少年  本当?
男  本当だ。あの、なにも浮かんでない青い空しかみたことない
少女  そっか、一緒だね
男  そうだ、一緒だ
女  そう、一緒だから、ここにいる四人は大人で子供で一緒だから、生きるか死ぬか四人で決めなきゃいけないの
男  ……
少年  わかった

少女、ゆっくりうなづく

暗転

明転

四人、舞台前面に並んでいる。少年と少女、楽しそうにしている。女、険しい表情をしてい
る。男、悲しそうに、服についた花を舞台上に捨てる

全員、舞台上から前へ進み、舞台を降りる。観客の顔を一通りみたあと、全員ゆっくりと上を見上げる。雲が浮かんだ空があるのか、暗雲が垂れ込めているのかは、観客にはわからない。

暗転

2016/12/14

足一「終わりの踊り」

終わりの踊り

登場人物 男

―――――――

創作メモ

このかつおの遊び場で、「祭!」ということをやったこと、例えそれが誰に響いたとしても、また響いてなかったとしても、私個人としての想いを、この場所に刻み付ける。喜びも悲しみも懺悔も、とても個人的なものだということを背負いながら、それでも見せる/見せ付けるものとして、また、その見せ付けたものへの反応を背負うことを決め、行う、終わりの儀式である。

個人的な儀式ではあるが、この儀式では観客を含めることを前提条件としており、観客、技術スタッフも含め、すべてを共犯関係へと誘導する。

つまり、あなた(このパフォーマンスが行われる空間すべてを含む)の存在がこの儀式にとって必要となる。その際、パフォーマーとその他の人間・音楽・照明・外部から流れてくる環境音、すべてに上下はなく、すべてが必要となる。それは、行われる瞬間、「この瞬間」にあるものがすべてだからである。

――――――――

「「」」は録音音声を示す。

▼は言葉には発さない。

突然の暗転、客席はざわついている

明転

何もない舞台

男、客席の方から舞台へ上る。観客なのかもしれない

音声が流れる

「「ここ、はかつおの遊び場です。大阪府大阪市中央区宗右衛門町4-

宗右衛門センタービル2F、かつおの遊び場です。この場所はライブハウスです。」」

男、イスに座っている。

「「いま、この瞬間、この場所でこの明かりをつけてくれているのは、このライブハウスのマスター、芳田かつおです。拍手」」

男、拍手している。

「「このマスターが作ったこの場所で、色んなひとがこの舞台にあがりました」」

男、静かにストレッチを始める

「「色んなライブハウスにでて、それだけで生きているひとから、この場所で初めて人前に立つひとから、色々です。それだけの歴史をこの場所は刻んできました」」

男、深呼吸をする

「「そこで、始まったひとつの歴史が、またここで終わるというのは、とても

綺麗なものだと、思います」」

「「それでは

男、礼をする

男・音声 終わらさせて頂きます

音楽

男、踊る

▼ここにおいて、僕の存在は誰に知られなくてもいい。ただ、この空間の持つ歴史性にほんのひとつ、かすかなひずみを入れたいだけだ。だから、この体、指先の、小指のほんの先とか、あばらのひとつとか、内臓の端の端を使って、今ある全部を使って、この空間の歴史に少しだけ切れ目を入れる。草で指を切ったときのような、後から開いてくるひずみを、期待と希望をこめて、今もっているものを全部ぶつけて、この空間に、少しだけ。

男、床に倒れる

音楽、ゆっくりと、長いフェード

男 机、イス、照明。この全部が全部、当たり前だけど、歴史を持ってます。この下にひかれた敷物。ぼくの友人が赤いペンキをこぼしたので、ひいてあります。更に違う友人は、この場所で持ってきたイスに乗って、それが壊れたりしました。その思い出には良いとか悪いとかはなくて、でもそのことは、かつおさんは覚えているかもしれません。そして、それは覚えていなかったとしても、この空間には染みのように染み付いてると思います。

男、立ち上がる

男 いま、話したことは、あなたとあなたとあなたとあなたの記憶に、少しだけ残ります。一日、さらに一日、もう一日たったら、この記憶は消えてしますかもしれません。消えなくても、どんどん風化していきます。それは、

「「そういうものです」」

男、動き始める

▼それについて、悲しく思うのは、ぼくだけじゃないと思う。でも、そのことについて、「悲しく思う」と言葉でいうのは、なんだかとてもうそ臭い。穴のあいた風船のようにそこから真実がどんどんどんどん、すごい勢いで抜けていくような気がして、ぼくはその方が耐え切れなくて、とても悲しくなる。だから、ぼくは踊るのだろうか。言葉にできないから。

男、息を止める

出来るだけ長い間とめて、それが弾けて、言葉を発する

それは、客席にいる、あなたに話している

男、話しながら、空間に対して体を動かす。発している言葉を、ひとつひとつ貼り付けていく

男 あなたは、どうしてここにいるのですか? 誰かのためですか、なにかのためですか、自分のためですか。

あなたがいるその、イスの上の空間、そこにあなたがいるから、いまここは成立しています。あなたがそこに立っているから、この空間は成り立っています。

あなたがどんな偶然な理由でここに存在していたとしても、いまこの瞬間、20161213日のこの時間このコンマの瞬間にあなたがいてこの舞台とかつおの遊び場が完成されています。あなたがこの場所にいるのは、必然です。

あなたがそこにいることが、この場所で何かが起こる理由です。ここで、ギターを弾いたり、歌ったり、手品をしたり、声を出したり、踊ったり。たとえ、すごく楽器の上手なひとが、踊りの上手なひとが、演技の上手なひとが、ひとりでこの場所で誰も知らない時間に何かを披露しても、それは存在しません。森の中で木が倒れても、それに気付かなければ、木は倒れたことにはなりません。でも、あなたは今倒れそうな木に、気付いてしまった。

男、目を閉じ、ゆっくりと動く

男 今、この瞬間に何が聞こえますか。道頓堀川の川岸を歩く人の声ですか。ぼくの話す声のほかに、近くのひとの呼吸のおとは聞こえますか。

「「いま、ぼくは話していませんが、話しているように聞こえますか。この音声は20161212日に録られたもので、加工をしなければ、それは変わりようがありません。でも、」」

男 いま話していることは、この瞬間が過ぎれば消えてしまいます。あなたは、この木が徐々に倒れかけていることに、気がついていますか。

この場所にいるということは、あなたに何かを伝えたいからかもしれません。

「「でも、ぼくは言葉というものを信じきることができません。嘘は本当に聞こえるし、本当は嘘に聞こえるからです」」

録音された音声も、いまこの瞬間に見つけられて発せられた言葉も、台本という形で作られた言葉も、どれも信じられるし、どれも信じることができない。この場所での本当がわからないから。

言葉よりも、ぼくがあなたに真摯に向き合う手段として、体を使います。

音楽

男、動く

▼あなたに伝えたいことなんて本当はないかもしれない。伝えたいことはない、この瞬間のこの今、それでもぼくの視界のなかにはぼくのことを見る瞳があって、そのあなたにやっぱり、(口には出せなくても)伝えたいことがある。あなたにワクワクするものを見て欲しい。意味がわからなくても、言葉にできなくも、鳥肌がたったり、心臓が締め付けられたりするものを見て欲しい。そして、それはぼくというものではなくて、この、かつおの遊び場という空間に存在した、そしてこれからもこの空間に生まれ、入れ替わり、そして存在し続けるということを覚えておいてほしい。この空間に染み付いた、嬉しさ・悲しさ・辛さ、そんなものを知らなくても、想像してほしいと思う。ぼくがしたように。

男、動き続ける

男 今、この場所で動いた、それを言葉で説明しようと、言葉で話すと、それはどうしてもずれてしまう。あなたの感覚が言葉という枠で収まるはずがないからだから、この瞬間の出来事は誰にも伝えられなくて、誰にも伝える必要がない、あなたしか知らないあなただけの現実です。

男、止まる

男 色んなめぐり合わせで、この場所で何度も舞台に立たさせて頂きました。2012年から始まった祭!の、いってしまえば終わりの始まりの合図として、この舞台に立ってます。ぼくの、この先の舞台に立つ予定はありません。その意味でも、終わりの踊り、させて頂きます。あなたが今日見た現実で、いまから、そしてこれから、もっとワクワクしていってください。

音楽

音楽、大きくなって暗転

舞台上は誰もいない。客席に男が座っている。

今まで再生された音声と再生されてない音声が同時にかかる。


音声の、「拍手」の音で、男は拍手をする。
長い拍手のあと、男は立ち上がり客席からも、出て行く。  

終。

2016/11/13

みねまつり 11/12

ミネマツリ 11/12

峯ちゃんの歌はすごく、情動的。そう思ってたし、そうだった。でも、今日、また新しい楽しみ方を見つけた気がした。

峯ちゃんの歌と芽衣子さんサポートギターは、今までライブで聞いた曲の伴奏がギターになるだけで全然違う。芽衣子さんのギターの音がまたいい。し、アコギ大好き人間だからとても嬉しい。合間のトークも含め、まったりとしたみねまつりの始まり。

「マイクロコズム」、同名の曲を絵本化して朗読。朗読のときディレイがいらなかったかも。生声がよかった。
お話が、状況じゃなくてシーンで描かれてるのが特徴的。峯ちゃんの書く歌も、絵本も、「これがあーなってこーなって」、じゃなくて、「こう」って描かれるから、ドキッとする。

マナカ作演、「クラウドナイン」。荒唐無稽なお話から始まる二人の話。無口なゆう(峯ちゃん)の、メリハリの効いた必要な台詞のチョイスがいい。途中の、ゆうがピアノの音で七瀬(マナカ)にメールの返事(返信)をするところすごくいい。観てる側に想像させる。七瀬のダメな感じの演出も、個人的にいまとダブってすごく痛かった。ラストのゆうの、顔を見せない長ゼリフすごくいい。元の曲の「クラウドナイン」の、輝きすぎて見ているのが辛い感覚が、曲とストーリーとかぶってよかった。ラストの七瀬、めちゃくちゃ強いサス当てたい。

ラスト峯ちゃんライブ。
峯ちゃんの歌は絵が浮かぶとすごく胸にくる。というか、結構心にズグって刺さってくる。ラストの「アンドロイド」。これもやっぱり、ぼくには受け止められなくて、ただただそれを受け止めたあとの峯ちゃんをじっと見てた。受け止めきれなくて、「アンドロイドのきみとぼく」が生まれたんだなぁって今日もう一度思い知らされた。
峯ちゃんは海の青みたい。すごく綺麗なんだけど、どこまで深いかわからないあたり。三日月が刺さってしんでしまえって言ってたのも、本心だろうな。それを受け止める深さはなんなんだろうな。

良い夜でした。